『竜馬がゆく』(司馬遼太郎)から(1)
人の世に道は一つということはない。
道は百も千も万もある。
万事、見にゃわからん。
俺は着実に物事を一つずつ築きあげてゆく。
現実に合わぬことはやらぬ。
偏見を持つな。
相手が幕臣であろうと乞食であろうと、教えを受けるべき人間なら俺は受けるわい。
奇策とは百に一つも用うべきではない。
九十九まで正攻法で押し、あとの一つで奇策を用いれば、みごとに効く。
奇策とはそういう種類のものである。
人間というものは、いかなる場合でも、好きな道、得手の道を捨ててはならんものじゃ。
男子は生あるかぎり、理想をもち、理想に一歩でも近づくべく坂をのぼるべきである。
夢中で日を過ごしておれば、いつかはわかる時が来る。
人生は一場の芝居だというが、芝居と違う点が大きくある。
芝居の役者の場合は、舞台は他人が作ってくれる。
なまの人生は、自分で自分のがらに適う舞台をこつこつ作って、そのうえで芝居をするのだ。
他人が舞台を作ってくれやせぬ。
金よりも大事なものに評判というものがある。
世間で大仕事をなすのにこれほど大事なものはない。
金なんぞは、評判のあるところに自然と集まってくるさ。
慎重もええが、思いきったところがなきゃいかん。
慎重は下僚の美徳じゃ。
大胆は大将の美徳じゃ。
わずかに他人より優れているというだけの知恵や知識が、この時勢に何になるか。
そういう頼りにならぬものにうぬぼれるだけで、それだけで歴然たる敗北者だ。
人として生まれたからには、太平洋のように、でっかい夢を持つべきだ。
おれは落胆するよりも、次の策を考えるほうの人間だ。
人間、好きな道によって世界を切り拓いていく。
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