連載コラム「猫の名言」
日本初のプロ民族音楽演奏家でもあり、福岡猫の会で病気の保護猫たちの看病を続けられてきた若林忠宏氏による連載コラム。
猫や人間に関する世界の名言を紹介しながら、猫たちとの生活のなかで筆者が体験したことや気づかされたことをつづります。
Vol. 6 「猫は考える生き物である」
例えば猫の場合だが、彼らは黙して語らない。
その代わり深く考え、さまざまに思いを巡らせる。
Andrew Lang(アンドリュー・ラング 英小説家、詩人、童話研究者 / 1844~1912)
「猫の知能は人間の三歳児程である」という説がありますが、とんでもございません。猫の様々な機能、視力や聴力などなどに関する科学者の評価の論拠は、その知覚細胞の数であるとか、脳の仕組みであるとかですが。人間の脳のことに関しても、まだまだ半分も分かっていないはずです。
また、思考力に関しても、製本技術が発達するまでは、日本では巻物で、海外でも巻物や折り畳みや、カードだったのが、「ページをめくる」という画期的なものが生まれ、考え方や思考も大きく変わったはずです。不思議なもので、それから数百年でパソコンの画面を「スクロール」する、という「巻物方式」に戻った訳です。実際、近年の人間の思考性は、章や項目単位の論理性とは大分変化してきています。
猫の場合、その優秀な動体視力と同様に、記憶力、分析力、検索力がもの凄く、人間の目では読めないほど高速のスクロールでも「読めてしまったり」「ポイントを探し出す」ことができるのかも知れません。
また、そもそも猫の思考回路は、リンクで飛び交っているのかも知れません。同じ土俵の同じルールでの比較ではないのですから、三歳児との比較は、どだい無理なことではないでしょうか。そもそも人間の三歳児は野良では生きてゆけませんし。
事実、表題のアンドリュー・ラングが言うように、猫は深く思考をするのです。むしろ「猫は考える生き物である」とさえ言ってもよいほどです。もちろん私も比較的最近まで「猫は仕事をしなくて良いなぁ」「寝てばっかりだ」「さすが寝子の名に相応しい」と思っていました。もちろん「まどろみ」も猫は大好きですが、今どちらであるか? は、おでこを触ってみると直ぐに分かります。思考している時は温かです。
我が家の猫たちの間でも、物知りとして知られ、ちょっと皆の尊敬を集めている「マイケル」に、「猫が考えていること」について訊いたことがあります。
丁度、物思いに耽っていた時です。食後は、消化器に血流が集中していますから、食後ゆっくり昼寝をして、空腹で落ち着かなくなり始めた時に、空腹を紛らわすために思考しているようでもあります。消化器から脳に血流が移動しますから、確かに理に叶っています。
「何を考えているの?」と訊くと。
「ほー」「考えている様子が分かるのか?」「珍しい人間だ」
「庭の蜥蜴(トカゲ)の数と、空の雲の行く先についてだ」
庭とは、かつてマイケルが闊歩していた、お隣の大家さんの庭です。確かに、蜥蜴はよく見ます。夏前くらいには、お腹が大きくなった雌も見ることがあります。あのお腹に数十の卵があって、孵化から成長までにどうしても減ってしまったとしても、そんなに天敵が多い訳でもなかろうに、爆発的に増えもしないのは不思議でもあります。が、猫のことです。「昨日あそこで緑色を見て、あっちでは金色を見たから」と記憶を頼りに数えているのだろうと思っていました。
再びマイケルに訊きました。
「で、その答えは?」
するとマイケルは、
「今のところ、答えはまだそんなに多くない」と言うのです。
「えっ?」「答えって、考えると増えて行くの?」と訊けば
「えっ?」「人間は違うのか?」
「やっぱりそうか」「人間が、愚かなことをするのは」
「考え方がそもそも間違っていた訳か」
なんと、猫は、考えれば考えるほど、答えが増えてゆくのだそうです。
そして、そもそもそれが「考えること」の目的であり、愉しみだというのです。
そう言われて初めて気づく。人間は、考えて答えを絞ってきたことを。言わば「消去法的思考パターン」だったのです。ところが、猫の「考え」は、「増加型・発展型思考パターン」だったのでした。
若林忠宏
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