猫の心の平穏は「常同」にあり – 連載コラム「猫の名言」




猫の名言
photo: Enrique Mendizabal

連載コラム「猫の名言」

日本初のプロ民族音楽演奏家でもあり、現在「福岡猫の会」で病気の保護猫たちの看病を続けられている若林忠宏氏による連載コラム。猫や人間に関する世界の名言を紹介しながら、猫たちとの生活のなかで筆者が体験したことや気づかされたことをつづります。(「猫の名言」TOPページはこちら
 


Vol. 27 猫の心の平穏は「常同」にあり

 
猫は、自分の同意のない変化を嫌う。

Roger A. Caras (ロジャー・カラス 米国の野生動物写真家 / 1928~2001)
 

 前回(Vol.26)でお話ししましたように、猫を人間の思い通りにさせることは、ほぼ不可能ですし、愚かしいこととも言えます。ところが、猫自身が納得した場合、より正しいことを納得して行動してくれます。しかも、その方が猫の健康と元気と長生きのためになるのです。
 
 その一方で、賢く、自然の摂理を感じ取る力と叡智に満ちた猫の行動は、そもそも「自然の摂理」に沿っている場合も少なくなく、それについては人間が大いに学ぶ価値があるものとも言えます。

 表題の動物写真家カラス氏は、勿論猫だけが好きという人ではなく、犬に関する名言も幾つか知られています。つまり猫だけを愛する愛猫家さんではないのですが、表題の言葉は、かなり深く猫を理解していると感心させられます。
 
 「自分の同意のない変化を嫌う」ということは、「同意・納得があればOK」ということでもありますが、何よりも「変化」というものに対して、猫が私たち人間が感じる以上のストレスと不安を感じることを、深く理解している人なのだなと思うからです。

 
 そもそも私たち人間には、「群れて暮らす哺乳類」であることと、「肉体的に脆弱な分、適応力に富むことで生き延び繁栄した」と「今迄の生活に無かった新たなものを創造する」という三つの大きな特徴があります。

 つまりこれらの力こそが、私たち人間の数少ない限られた、しかし最大の長所であり武器であると言える訳です。

 逆に、我が儘・勝手放題ですと群れから追い出されてしまいますが、天敵から逃げる足も遅く、牙も鋭い爪もなく、体を守る甲羅も皮毛もなく、全く独りでは生きては行けない動物なのです。

 
 一世代以上の長い年月を掛けてのことですが、人間はより良い環境を求めて住む場所を替えたり、同族同士の争いで避難・逃避行をくり返して来ました。
 やはりそこでも「適応性」に富むことが生き延びることの最重要条件であった訳です。

 また、その特異な「創造力」と「開拓精神」も人間の体と心と知能を活性化させ、より健康な状態を維持し、良質の子孫を残して来たことも重要な要素です。

 したがって、「群れ=社会」が恒久的に安定し、平穏無事に日々同じようなことがくり返されることは、ある意味「理想」なのですが、皮肉なことに多くの人間は、それでは逆にストレスが溜まってしまうのです。

 不要になった能力(変化に対する適応力)が不活性になってしまい、身も心も澱んでしまうと同時に、「平穏無事」が長く続くと、逆に無意識(潜在意識)の中に「閉塞感」を高めてしまうという皮肉な本質を持っているとも考えられるのです。
 キザに言えば、「人間は根っからの旅人である」ということですが、「ストレスを貯め易い」ということも言えるのです。

 
 ところが、世界の様々な民族を長い歴史の視野で見てみると、「変化に富んだ波瀾万丈の歴史」を持つ民族よりも、「日々同じで平穏無事な歴史が長い」民族の方が、平均的に長寿なのです。しかも、所謂「長寿国」とか「長寿民族」と言われる人々は、むしろ苛酷な自然環境で生きている場合が殆どなのです。夏は高温、冬は極寒で、険しい山々に囲まれ、食料も決して豊富でないような。

 つまり、「平穏無事で変化に乏しい日々」に対し「閉塞感のストレス」を感じないことと、「自然環境の厳しさ」を上手に有用ストレスとして受け止め、悪性のストレスを溜め込まないことが、健康で長生きの秘訣という結論に到るのです。言い換えれば、多くの人間は、自らで自分を追いつめ不健康にして病気になったり短命で終わるということです。

 勿論「何もしない長生きよりは、短命でも自分で満足出来る波瀾万丈な人生が良い」という逆説的な選択もし得るのも人間の人間たるところでもありますが。
 「自然を愛し、自然と向かい合い、つつましく、穏やかに、笑顔を絶やさず」という選択もまた人間らしさでもある訳です。

 さて、猫の場合ですが、猫は、基本的に「閉塞感のストレス」を処理することに長けた生き物です。危険が去るまで何時間もじっとしていたり、お気に入りの場所があれば、一日中そこで昼寝をして、時々ご飯やトイレに動く程度。言わば「なまけもの」のような生き方が、ある意味理想であり自然体といった感じです。

 ところが、何らかの原因で精神状態のバランスを壊し、様々なことが狂い悪循環を来した場合、猫はそのストレスに対し非常に脆弱な生き物に変貌します。そして、「何とかしてこの状況(状態)を打開したい」という精神状態に支配され、狂ったように動き続けることがあります。「状況の打開は、じっと辛抱して待つに限る」というこの基本こそ、体力温存に繋がり、最も賢明な判断なのですが、全く逆になってしまう場合があるということです。

 ペットショップのガラスケースの中でも、私たちの家で喧嘩や治療のために入れられたケージの中でも、「出せ!出せ!」と鳴いたり壁面を擦ったりだけでなく、短い距離を凄い早さで行ったり来たりします。

 獣医学用語では、これは「常同行動」と言われ、極めてゆゆしき状態なのです。

 
 その一方で、用語的に似ているがために、獣医さんでも若干混同気味の人をたまに見かけますが「常同性」というものがあります。これは、むしろ「健康的で、平穏な状態」を意味します。

 何時も決まった時間に、決まったメニューのご飯を、決まった場所で決まったお皿で、決まった量を食べることを「由」とする感覚です。

 猫によっては、その前に必ずトイレに行きたがる子も居れば、必ず爪研ぎをしたがる子も居て、同室に二三頭居る場合、さっさと食べ終わった子に盗られてしまう場合も少なくなく、「何で今それなの?」といじらしくも不甲斐ない切ない想いに駆られます。

 事の真偽は分かりませんが、アメリカ大リーグで今も活躍する人気が高く有名な日本人選手が、『一年中同じ奥さんのメニューでも良い』とおっしゃったかおっしゃらなかったか?が話題になったことがありました。

 「分かる!」と言う人もあれば「分からない!変だ!」とおっしゃる人も居て、賛否両論でした。

 ところが世界的視野で見ると、何か非凡な才能を持ち、更にそれを活かし歴史に名を残した人の多くに同じ傾向が見られるのです。
 そのような人は、普通人が耐えられない緊張やストレスには強い代わりに、普通人が何ともなく平気に感じるストレスや変化にはめっぽう神経質ということも共通しているようです。

 ご本人が「猫好き」かどうか?は別として、猫的な人であることは言えるかも知れず、実際愛猫家さんが少なくないのも事実のようです。

 
 最後までお読みくださってありがとうございます。

 
 民族音楽演奏家/福岡猫の会代表: 若林忠宏


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著者紹介(若林忠宏氏)

「福岡猫の会」




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