逃げるなら前に逃げろ – 連載コラム「猫の名言」




猫の名言
photo: Serge Saint

連載コラム「猫の名言」

日本初のプロ民族音楽演奏家でもあり、現在「福岡猫の会」で病気の保護猫たちの看病を続けられている若林忠宏氏による連載コラム。猫や人間に関する世界の名言を紹介しながら、猫たちとの生活のなかで筆者が体験したことや気づかされたことをつづります。(「猫の名言」TOPページはこちら
 


Vol. 9 「逃げるなら前に逃げろ」

 
凧が一番高く上がるのは、風に向かっている時である。風に流されている時ではない。

Sir Winston Churchill (ウィンストン・チャーチル 英、第61、63代首相、政治家、軍人、作家 / 1874~1965)
 

 第二次世界大戦前後の激動の時代にリーダーシップを発揮した伝説の首相チャーチルもまた、大の愛猫家として知られています。

 私は恥ずかしながら、思春期くらいまで、この物理を理解していませんでした。チャーチルの言う道理を何で気づいたか忘れましたが、「そうなのか!」と思えばすべて考え違いをしていました。「凧」と同様に、飛行機も向かい風で「揚力」を得る。だから離着陸の方向を風向きに合わせて替えていたのです。
 着陸の時でさえ風に向かうことで速度を落とし「揚力」を得ながら降りて行くのでした。

 帆船でさえ、風上方向に行かねばならない時は風を斜め前から受け斜め前にジグザグに進む。向かい風でも目的方向に果敢に進むのでした。ヨットなどは常にそうだとのこと。

 不治の感染症で、二週間不眠不休の壮絶な最期を遂げた「ちゃめ」については、そのエピソード、想い出がたくさんあるばかりでなく、私の「師匠」のひとりに挙げているほど、学んだことが多く。一冊の本が書けてしまいそうです。
 その「ちゃめの教え」の最初で、その後の教えの中でも一番大きいものが「逃げるなら前に逃げろ!」でした。

 「ちゃめ」は、私との約束を守って生まれ変わってやって来ました。ある日二三軒離れた駐車場で目があって、互いに「だよね!」と思いつつ。確証を得るのに一、二ヶ月かかってしまったのです。その間彼は、垣根の上から遠巻きに私を観察していました。
 ある時、冒険してみたのか? コンクリート塀から滑り落ちたのか? 庭でばったり遭遇した時は、お互い慌ててしまい、「ちゃめ」も、塀を登ろうとパニックになっていました。が、流石に無理。すると、なんと!「ちゃめ」は、私に向かって突進して来たのです。思いがけない展開に私が唖然としていると、難なく私の足下をすり抜けて逃げてしまいました。
 
 私は、その時、
 「逃げるなら前に逃げろ」を教わったのです。

 出逢った時に既に重傷でしたから、六年は頑張った方ですが、無念でした。今の知識ならもう数年一緒に居られたと思うとなおさらです。

 その六年のたくさんの「教え」は、日々より深く私の心に届き、少しずつで情けないですが、強くしてくれたと思います。

 猫たちの思考の基本には、「押しても駄目なら引いてみな」という「相反する答え」が常に用意されていることも「ちゃめ」に学びました。「逆説的なところに活路がある」「逆もまた真なり」「二律背反」「真逆は実は同源同義」などなども、皆「ちゃめ」に学んだことです。

 愛猫家のチャーチルは、「凧」の話しの他にも、そのような「猫的思考」を思わせる名言を残しています。例えば、「凧」の話しをより分かり易く説いたと思われるのが、

危険が迫っている時、決して逃げ出してはいけない。むしろ危険は倍増する。しかし、決然と立ち向かえば、危険は半減する。

です。
 
また、

愉快なことを理解出来ない人間に、世の中の深刻な事柄が分かる筈がない。

などの逆説は、正に「猫的思考」の賜物と言えましょう。

その意味では、

私は豚が好きだ。犬は我々を尊敬するし、猫は我々を見下す。豚は我々を対等に扱ってくれる。
 
 などは、愛猫家と知らない人が聞いたら、「豚、犬は好きだが、猫は嫌い」と理解しそうですが、そこがチャーチルの「猫的」なところだ、と言えます。
 元々「猫的な素質」があったのか? チャーチルもまた「猫に学んだ」のか?

 今でも不思議な気持ちに包まれるのが、「ちゃめ」とは、なぜかほとんど会話が無かったことです。それは彼にはすっかり私の心がお見通しだったからでしょう。けれど、私は日々新たな学びに感動するばかりで、こちらから何かを訊く余裕が無かったのかも知れません。

 私からの数少ない質問もまた、「なぜ、『前に逃げる』なんて凄いことを思いついたの?」でした。

 すると「ちゃめ」は、珍しく言葉で答えてくれました。

 「じゃあ、何かい? 人間は敵や恐怖に背を向けて逃げるのかい?」

 「僕はそんな怖いことはとっても出来ないね!」

 「だって、それじゃあ、敵や恐怖が何処まで迫って来ているか分からないじゃないか!」 
 と。

 
 最後までお読みくださってありがとうございます。

 
 民族音楽演奏家/福岡猫の会代表: 若林忠宏


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著者紹介(若林忠宏氏)

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