連載コラム「猫の名言」
日本初のプロ民族音楽演奏家でもあり、現在「福岡猫の会」で病気の保護猫たちの看病を続けられている若林忠宏氏による連載コラム。猫や人間に関する世界の名言を紹介しながら、猫たちとの生活のなかで筆者が体験したことや気づかされたことをつづります。(「猫の名言」TOPページはこちら)
Vol. 1 「何も無いが在ること」(無限に自由な想像の世界)
猫は元来ミステリアスである。彼らの脳裏には、我々の認識を超えた数多のものが去来している。
Sir Walter Scott (ウォルター・スコット 英詩人 / 1771~1832)
皆さんは、最近「夢想」することがあるでしょうか? 私たちはきっと皆、子供の頃はあれこれ楽しい「夢想」を毎日たくさんしていたはずです。
もちろん現実の世界は子供にとっても、今も昔も決して楽ばかりではなかったはずです。私の時代は、学校の先生だって遠慮無く体罰を喰らわしていましたし。父親のみならず、母親も容赦なく平手打ちで叱りつけました。それどころか、あの頃は、道ばたや原っぱで縁もゆかりもない知らないお爺さんにまで、怒鳴られ叱られが当たり前の時代でした。
子供だって「世の中そんなに甘くない」と分かっていたのです。なのに、性懲りも無く「夢想」をする。それがまた楽しくて楽しくて。ちっとも実際には叶いもしないのに。
ところが、思春期を過ぎて「はたっ!」と気づくのです。「こんな自分は、何処かおかしいのでは?」と。「猫」や「芸術家」ならば、「神秘的! ミステリアス!」と言ってもらえるでしょうが。「現実世界」に生きて行くためには、いいかげん子どもじみた「夢想」から卒業しなくてはいけないんだ! と。以後ぱったり「夢想」をしなくなったのです。
でもそれは言い訳でした。後に世界に知られる芸術家は、少年時代思春期にその孤独に耐えて来たのでしょうし、そもそも猫は、どんな子でもそれから逃げようとはしない。
それから何十年。孫が生まれる歳になって、またあの楽しい「夢想」が出来るようになって。厳しい日々の生活もどうにか頑張れるようになったのは、何時も回りに沢山居る猫の中の、小さく生まれたけれど、真っ先にお母さん猫のお腹から飛び出て来たような元気な雌猫「プリン」から、とても大切なことを学んだことがきっかけでした。
ある昼下がり、プリンが窓の外を何時迄もずっと眺めているのです。「ああ、また小鳥か烏でも近くに居るのだろうな」と思いながら、猫たちの世話に追われていました。「山が見えるようなところに越して来て良かった!」「プリンも嬉しそうに景色を眺めてくれているんだろう」と思いながら。
世話が終わって、時間に追われながら部屋を出る時。ちょっとふざけてプリンのほっぺたに頬をくっつけて、何を見ているのか探してみました。
ところが窓の外には何もありませんでした。ちょっと意外だったので、プリンに訊きました。「一体何を見ているんだい?」と。
するとプリンはたった一言こう答えました。
「風」
と。
「やっぱり猫はすごいなぁ」
特にプリンは心が真っすぐなうえに、そうとう賢い子ではありますが。猫たちはきっと、見えないものもたくさん感じているのでしょう。そして、私たちが考えもしなかったようなことを思いついているに違いありません。同じ見えるものでも違ったことを発想している。猫は皆、天性の「夢想家」なのかも知れません。
最後までお読みくださってありがとうございます。
民族音楽演奏家/福岡猫の会代表: 若林忠宏
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・著者紹介(若林忠宏氏)
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