連載コラム「猫の名言」
日本初のプロ民族音楽演奏家でもあり、現在「福岡猫の会」で病気の保護猫たちの看病を続けられている若林忠宏氏による連載コラム。猫や人間に関する世界の名言を紹介しながら、猫たちとの生活のなかで筆者が体験したことや気づかされたことをつづります。(「猫の名言」TOPページはこちら)
Vol. 13 「孤独を愛する寂しがり屋」
孤立することが悪いなんてちっとも思わない。僕にとっては最高の気分さ。
Andy Warhol (アンディ・ウォーホル 米画家、芸術家 / 1928~1987)
現代美術の奇才、ウォーホルもまた無類の猫好きとして知られています。
彼がしばしば、周りの人間に理解できない言動を行ったり。友人たちやファンたちの気を損ねる態度をとる度に、人々は彼を「孤独を愛する人間」と精一杯の評価を下したのでしょう。そして、思わずその点を本人に問いてみれば、表題のような言葉を平然と言ってのけたわけです。まさに「猫的な猫好き」の典型と言える「偏屈の塊」、「変人」だったのです。
しかし、猫好きで、猫を分かっている人間のみならず、彼のこの言葉には、多分に「強がり」があることが分かるはずです。本当にそう思っていて、それが自然で普通の状態であれば「最高の気分さ!」などとは言わないはずです。
おそらく彼も、ある時は、仲間の輪に入って賑やかに楽しむことを「良いこと」として「望むべきだ」と試みたに違いありません。そして、そこそこに「これこそ最高の気分だ!」と感じたこともあったのでしょう。むしろ純粋な分、誰よりも盛り上がっていたこともあったかも知れません。また、意外にも芸術創作活動は、そのような時に大いなるひらめきを得たりもします。
しかし、それも時間によって断ち切られ、散り散りにそれぞれの家に帰って行く。「宴の後の寂しさ」を、彼のような性格は、人一倍、「虚しく、寂しく」思ったのではないでしょうか。
もっとも、宴もたけなわの最中に突然ひらめいて、仲間を放って家に帰って創作してしまうようなことも度々あったのでしょう。そして、作品が出来上がって、真っ先に仲間たちに報告し、感謝を述べようと飛んで行けば、もはや誰も相手にしてくれない。
そんなことが度重なったことも加わって、当然のごとく「孤立」してしまうのでしょう。これは、猫好きで猫的な芸術家や文豪に共通した不憫な性です。
なので、ウォーホルのような性格の「猫的な人間」は、決して「孤独を愛している」訳ではないのです。むしろ、無類の「寂しがり屋」かも知れません。それは、猫を知れば知るほど分かることです。猫はとっても「寂しがり屋」です。
しかしそれは「認めてもらいたい」という「関係性」の問題ではないのです。「存在承認願望」もまた「群れ社会」に依存する人間ならではのことなのでしょう。
猫はとても情が豊かな生き物ですから、大好きな猫や人間と「ずっと一緒にいたい」と強く思っているのです。ただ、「独りになりたい時」や、「撫でて欲しい場所、欲しくない場所」のこだわりが強かったりが玉に傷ですが。
野良で二年のおつきあいだった子が、兄弟が轢かれて死に、当の子も前足の一本が地に着かなかったので捕獲保護した際。数ヶ月前から寄り添っていた「彼女」らしきべっぴんさんも一緒に保護しました。猫仲間や猫の専門家さんに言わせると「不必要なこと。人間感覚の誤解」らしいですが。私はきっと寂しがると思ったのです。案外、「猫を分かっている!」とおっしゃる人の方が、「猫は孤独を愛する」と思い込んでいるのかも知れません。
ところが捕獲して一年近く経った頃、「彼女」の方が、わずかなスキに家出をしてしまったのです。我が家では雌猫は避妊しないので、季節になるとどうにも落ち着かなくなります。
その日から、彼と私は、一日に何度もベランダに出て「彼女」の帰りを待ちわびました。程なく彼も私の想いが自分と同じだと気づいたようで。「さあ!交代しよう!」「部屋でお休み!」と言うと「とことこ」と部屋に入って行き。「あっ!来たかも!」と呼ぶと飛んで来たりしました。一週間後、無事に再保護出来ましたが、彼はそのとき以来、がらっと変わって、深い所で心を通わせてくれるようになりました。
もちろん、個体差もありますが、屋内で生まれた家猫二世よりも、野良を体験した子の方が、物事の有り難みを良く分かっているようです。
猫にとっての「寂しさ」は、純粋な「愛おしさ」であり、「有り難さ」なのでしょう。
最後までお読みくださってありがとうございます。
民族音楽演奏家/福岡猫の会代表: 若林忠宏
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