独りで生きられること – 連載コラム「猫の名言」




猫の名言
photo: Gabriel González

連載コラム「猫の名言」

日本初のプロ民族音楽演奏家でもあり、現在「福岡猫の会」で病気の保護猫たちの看病を続けられている若林忠宏氏による連載コラム。猫や人間に関する世界の名言を紹介しながら、猫たちとの生活のなかで筆者が体験したことや気づかされたことをつづります。(「猫の名言」TOPページはこちら
 



Vol. 17 「独りで生きられること」

 
私はスペシャリストを好まない。私にとって自分を専門化すること自体、自分の宇宙を狭めることであるからだ。

Claude Achille Debussy (クロード・ドビュッシー 仏作曲家 / 1862~1918)
 

 この連載のVol.5でご紹介した、ラヴェルと同時代のフランスの作曲家のドビュッシーもまた、知る人ぞ知る愛猫家です。
 
 ドビュッシーが言う、「専門化=専門家=宇宙を狭める」を、分かり易くすると「専門化=専門家=世界観を狭める」ということであり、いわゆる「樹を見て森を観ず」なのです。これに「宇宙」を持ち出してくる感覚こそは、前々回のVol.14で推理小説家ブラウン氏が述べた、「猫独自の見地」に他なりません。それほどにドビュッシーもまた「猫的な人間」なのです。

 何故ならば、猫は常に、宇宙と繋がった感覚を抱いているからです。それ故に、猫の「見地=感覚と判断基準」は、自然の摂理を超越した道理に根ざしているのです。などと言うと「お伽話」のようですが、仮にこれが「大げさな話し」であるとしても「当たらずとも遠からず」なのです。

 猫は、「樹に捕われない自由な心で、森=森羅万象を常に感じている」ということであり、それは、社会性や人間関係を優先せねばならない私たちには、想像もできない視野と世界のはずなのです。しかるに「宇宙」も決して大げさな話ではないのです。

 しかし、ドビュッシーが「嫌いだ」と言った「専門化=専門家」ですが、ドビュッシーやラヴェル、サティー、ピカソ、ダリ、エドガー・アラン・ポー、などなど愛猫家の芸術家・文豪は、独り籠って集中する自営業であり、それは学問や物作りの「専門家」に負けないほど、専門的な姿であるはずです。

 と言うことは、やはり、「専門化と宇宙観」という、一見かけ離れた組み合わせが大きなキイワードなのでしょう。
 つまり、「森を観る、感じる」ということは、森全体を「ぼーっ」と眺めていることではないのです。逆に、そもそも「樹を見て森を観ない」タイプの人間が「専門化」するということは、ある意味、「群棲における個人能力による棲み分け」に即した発想であるとも言えるのでしょう。

 この姿勢(生き方や価値観)は、時に様々な問題を引き起こし、往々にして「無責任」な結果を招きます。
 例えば「医療」ですが、今日でこそ「総合心療科」という「全身医療的な価値観」の必要性が唱えられて来ていますが、本来西洋医学も東洋医学と同様に「全身医療、予防医療」だったはずで、そもそも、すべてのお医者さんは、医師免許を得る段階では「総合診療医」だったはずです。それが「専門化」するのは、得意分野もありましょうが、やはり「棲み分け」の要素が多いのではないでしょうか? 
 私の母は、卒中で半年生死の境を彷徨いましたが、あの当時、近所に「総合心療科」があったら「頭が痛い?風邪でしょう、様子を見ましょう」とはならなかったかも知れません。

 また、昨今話題になっています、食品管理のずさんさや違法な手抜き建築も、自分のところだけ及第点であれば「問題ない」「責任は果たした」という「専門・分業感覚」が裏返って「共存感」や「共有感」が薄れた結果なのではないでしょうか? 

 猫は、「独りでも生きて行くし、生きて行ける生き物」です。そんな猫が人間のように言語を用い、物を作ったらもの凄いことになるでしょう。それぞれの家で、畑を耕したとして、農機具も全部自分で作ってしまい、しかも料理人でもあることでしょう。すると、そもそも隣の家との間でさえも、取引や物々交換さえも滅多になく、「果たしてそれは社会なのか?」という話しになってしまいます。
 
 そう考えると、やはりドビュッシーは、社会に作品を発表して生業にしておきながら、実は、社会性というものを否定している本音も垣間みられます。
 互いに親交もあった同時代のフランスが生んだ大作曲家、ラヴェルやエリック・サティーと比べると、流麗な繊細さとスマートなイメージでしたが、実は意外に偏屈なのかも知れません。

 
 最後までお読みくださってありがとうございます。

 
 民族音楽演奏家/福岡猫の会代表: 若林忠宏


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