猫好きが嵩じると猫に成る? – 連載コラム「猫の名言」



連載コラム「猫の名言」

日本初のプロ民族音楽演奏家でもあり、現在「福岡猫の会」で病気の保護猫たちの看病を続けられている若林忠宏氏による連載コラム。猫や人間に関する世界の名言を紹介しながら、猫たちとの生活のなかで筆者が体験したことや気づかされたことをつづります。(「猫の名言」TOPページはこちら
 


Vol. 45 「猫好きが嵩じると猫に成る?」

 
好かれているか拒否されているかによって、魅力的にもなれば嫌味たらしくもなる。サティーは、一筋縄ではいかない人物だった。

Anne Rey (アンヌ・レエ)
 

何時もお読み頂きまして、誠にありがとうございます。

 今回の言葉は、当連載の中でもちょっと異色な方面からの言葉です。

 当連載では、「(主に)愛猫家が述べた猫についての言葉」と、「愛猫家で知られる著名人の如何にも猫的な発想の言葉」をメインに、「猫についての世界の諺」などを織り込みながらご紹介して来ました。

 今回の言葉は、ドビュッシーやラベルとも親交があった、フランスの奇才(作曲家)エリック・サティーについて何冊かの著作を発表している、アンヌ・レエがサティーについて語った一言です。

 しかし、まるで「猫」について語っているかのような言葉です。
 やはりサティーは筋金入りの「猫的な人間」だったことの証言でもあるわけです。

 つまり、表題の文言は、素直にそのまま受け取って
「猫は、好かれているか拒否されているかによって、魅力的にもなれば嫌味たらしくもなる」と読んでも、全く「その通り!」なのです

 が、それでは当連載でスペースを頂いてご紹介し、皆様に読んで頂く意味がありません。

 今回は、当連載も残り後僅かになりましたこともあって、私と猫(や生き物)との「そもそも出逢い」についても触れながら、表題の文言を解いてみることをお許し頂ければ幸いです。

 私が生まれて「物心着いた頃」既に私の回りにはシャム猫母子とコリー犬、そして母や借家人の日航の客室乗務員さんに抱かれて庭に出れば、禽舎には数十種の鳥が飼われていました。

 昭和30年代初頭当時、父は文学座の研究生でしたが、結核入院で出世が遅れ、研究生の給料だけでは生活出来なかったので、犬猫・鳥類のブリードという「趣味と実益」を兼ねたことをしていたのです。血統証付きのシャムとコリーは、当時ではかなり高価なペットでした。庭の特別な禽舎で飼われていたインド孔雀の二世は、ニッカウィスキー仙台工場に貰われて行き、その際に頂いたホームバーセットは今も我が家にあります。
 
 文学座がまる一月、大きな芝居を上演・巡演する時は、母と私が生き物の飼育係でした。小学校でも当然のように六年殆ど「飼育係」でしたが。

 当時は、まだまだ差別的な感覚も少なくなく、差別用語もふんだんにありましたし、虐めも問題視されていませんでした。なので、「やーい!役者の子!」「河原○○!」などと同級生に石を投げられることなどしょっちゅうでした。

 尤も、学校には給食目当てで行っていたような子でしたので、友達を作ろうとも思わず、終われば「飼育小屋」か我が家の「飼育小屋」に飛んで行く毎日でした。

 ある時期、近所の病院の患者さんが手を付けず鍋に残った残飯を貰えるようになり、「アヒル」の餌に私が貰いに行く係になったのですが、小学校低学年には、5kgのビニール袋が重たくて、道を引きずって帰ったものでした。
 それを同級生の親御さんが見たらしく、「おまえの家では、病人の食べ残しを食べて暮らしているんだってな!」「わぁー汚い!」「病気が移るぞ!逃げろ!」とより一層大変な事態になったこともありました。
 
 でも幸いにわたしもかなり猫的な子どもだったので、そんなことを悲しく思うことはなく、当時一番哀しい想い出は、真冬の雪の日、片足が曲がったアヒルが私の腕の中でこと切れたこと、という子でした。虐めについて思い出して苛めを自覚したのは中学になってからというほどで、大して気にもせず、傷ついてもいなかったのです。

 そんな生き物との毎日でしたから、その実全ての発端の父とはあまり接点がなかったのです。むしろ夜遅く帰り、私が学校に行く頃はまだ寝ていて。「起こさないように!」と母に厳命されながら出掛ける日々でしたし、私が風邪を引けば「近寄って移したら芝居で声が出ない」と、緊張させられてばかりでした。

 なので、父ともその演劇ともとても距離があったのです。

 しかし「門前の小僧、習わぬ経を読む」のごとく、父の台詞の稽古を襖一枚で聞いて育っていたのでしょう。2010年に父が亡くなって数年して、親戚会議で使命されて、父の演劇の遺品の整理と、インターネットにてその業績を紹介するサイトの立ち上げを引き受けた際、その資料の芝居の内容や、当時父がどのように考えて、どのような心持ちであったか?などの記憶が、彷彿と蘇って来たのです。

 それでも現場の父は殆ど見ていないので、既にお亡くなりになった盟友の方々も多いのですが、ご健在の方、後輩の方、「恩師だった」と言って下さる方々にもインタヴューを重ねました。その中に、今回の表題の言葉と深く通じる父の言葉を「今も忘れられない」とおっしゃって下さった方が、数人(異口同音に)居たのです。

 それは、父がヨーロッパ各地の国際演劇祭に出席したり出演した時のことです。
と或る大学教授で言語学者が「あいつの語学力は天才的だ」と言って下さったとかの語学力もさることながら「なにしろ向こうの演劇の巨匠や名優に対して一切物怖じしないのが驚いた」と何人かの方が言うのです。
 
 そして、ある時期父の側近をしてくれていた人は、父の言葉に目の鱗が落ちた、と話してくれました。

 そのひとつが、「こっち(ヨーロッパ)では、自分の意見を即座に言えない奴は、翌日から食事も同席して貰えないぞ」でした。
 父は後に仏文相となったJ・ラング氏と何度もランチタイム・ミーティングをしたり、彼の車で空港に送って貰って打ち合せをしたり、彼の寺山修司(日本の前衛演劇の雄)さんを仏フェスティヴァルに連れて行ったりしていました。

 フェスティヴァルで何処かの国の芝居が終わった休憩やランチで、感想を聞かれ、多くの日本人のように「良かった!」「感動した!」ではあちらでは全く駄目。
「何処がどうだったか?」を見事に自分の意見で即答出来ないと「つまらん奴だ」「時間の無駄だ」とされてしまう、ということです。
 
 ところが、同じことが、その元側近さんにとって全く別な意味になりました。
それは日本に於いてのことです。
 
 側近さんが「あっ!○○さんだ! ご挨拶しなくて良いの?」と,何処かのお偉いさんか、その仲介の人を見掛けて言うと父は、
 「いいんだ………。あいつはつまらん、時間の無駄だ」と言ったというのです。

 もし、日本では日本人を貫いていれば……….。昨年亡くなって特集番組も組まれた演劇人のような地位と収入が得られたかも知れないのですが。
 
 サティーもまた。それをしていれば。日本人の多くがドビュッシーやラベルと同じだけ知って、愛奏・愛聴したかも知れません。

 しかし、父が述べたようなことが基本のヨーロッパに於いて、「魅力的」から「嫌味たらしい」までの大きなギャップがあるヨーロッパ人って? 
 サティという人の偏屈ぶりは、並大抵ではないということです。
 
 猫はそれでも、多少つれないくらいは猫好きには容認されていますし、
 万が一度が過ぎて、生涯野良であったとしても、寿命は短いかも知れませんが、
 自分の力で食物を入手することが出来ますが。

 やはり人間は社会という「集団」に守られ、寄与しながらでは生きて行けない。
 逆に言うと、サティーのような超絶的な「偏屈」や、父のような人間が、伸び伸びと好きなことが出来たのは、

 確かに「良い時代」だったのだろうな。
 
 と、今の時代を体験してみると、つくづく想います。

 
 最後までお読みくださってありがとうございます。

 
 民族音楽演奏家/福岡猫の会代表: 若林忠宏



 
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