連載コラム「猫の名言」
日本初のプロ民族音楽演奏家でもあり、現在「福岡猫の会」で病気の保護猫たちの看病を続けられている若林忠宏氏による連載コラム。猫や人間に関する世界の名言を紹介しながら、猫たちとの生活のなかで筆者が体験したことや気づかされたことをつづります。(「猫の名言」TOPページはこちら)
Vol. 39 「目的と欲望」
我々は心の奥深くに同じ欲望がある。ネコはそれに沿って生活している。
Jim Davis (ジム・デイビス 米国の漫画家 / 1945~)
茶虎(オレンジ・タビー)の「ちょい悪」な感じでも、何故か憎めないひょうきんな猫「ガーフィールド」が世界的にヒットした、漫画家ジム・デイビス氏の言葉です。
この連載の著名人の名言のほとんどが、「ぱっと読んで、直ぐ分かるようで、実は良く分からない」というのが多いように思うのですが、如何でしょうか?
今回の名言も、
猫と言えば、猫好きでない方も含め、多くの方が異口同音におっしゃる
「我侭で自分勝手でマイペース」という定説を語っているだけにも思えます。
そして、、
人間は皆、内心で「それ」を強く望んでいる。
だが、それを優先してしまったら社会人として成り立たないし、
孤独に生きるしかない。
と言う話しなのだろう。で納得し終わってしまいます。
しかし、文言の名言は、もっと深いと思わざるを得ません。
何故ならば、上記のような単純な話しならば、「心の奥底」と迄は言わず、
「我々は皆、自由に好き勝手やりたいと内心で思っている」で良い筈です。
「だがそうも行かないのが社会人と言うものだ」
「それに比べて君たち猫は良いね!気楽で」といった感じで良いのではないでしょうか?
しかも、漫画のガーフィールドは、しばしば相手のことを気に掛けたり、時には英雄ぶってみたりで、あれこれ色々考えており、必ずしも「自分勝手」でもありません。
なので私は、今迄何気に見て終わっていたアニメを見直し、
ガーフィールドとジム・デイビス氏についてもう少し丹念に眺めてみました。
私が感じたジム・デイヴィス氏は、本質的には結構頑固な人で、
その内面には世の中の不条理や、日常生活の何気ない些細なおかしなことに対して
かなり敏感な人と思います。
例えば、あちこちに「○○モール」のような商業施設がどんどん出来る!」
「行ってみればどの店も行列だらけ」「定員はロボットのようで態度が悪い」
「動物に芸をさせたがる飼い主」「その珍しさだけを評価し番組を作るTV局」
今や世界の何処でも同じなのか! と気づかされる、私たちが何も気に留めない良く在る光景に対する皮肉を、ジム・デイビス氏は全てガーフィールドという憎めない存在にとても爽やかに代弁させるのです。
「○○モール」では、ガーフィールドはその紹介者。なんと地面に種を植えると簡単に商業施設が生えて来る。ヨーグルト屋でガーフィールドが引いた整理番号は四桁。昼寝をして待った挙げ句が欲しいテイストが無いと言って帰る。
そうこうしている間に「栽培して出来た○○モールへの給水を止めなかったから、モールは海に流される」「そもそも忠犬オーディーが蛇口を開けたまま締めなかったから」「忠犬オーディーは『開けろ!』と命じられたけど、その後『締めろ!』の指示はされてなかった」「ガーフィールドは『大変だ!』とオーディーに舟を漕がせて追いかける」「間に合わないと海にヨーグルトが流れ出る!」
でも間に合わないとなると「しょうがないか」と切り替える。
TV出演が決まったけれど、それはガーフィールドが流行の「ハワイ風邪」に感染し、ハワイに関することを聞くとフラを踊り出すから。ところが収録直前に飲みたがらなかった薬を飲んだので本番には踊らない。
飼い主の男性ジョンは、何時もおっとりしてガーフィールドに無茶を言わず。飼い犬のオーディーは、ひたすら忠犬で、彼だけは人間の言葉をしゃべらない。
尤もガーフィールドは私たちには語りかけますが、物語の中では人間と会話はしない。
一番愉快だったのは、ガーフィールドが「ワンワン!」何かを訴える犬のジョンに、
「何言ってるんだか分からないけど今忙しいんだ、後でな!」という下り。
そして、私たちには、
「皆勘違いしている、こっちが現実、そっちがアニメの世界」と言う。
世の中への諷刺を隙間無く織り込んでおきながら、猫の習性をも見事に皮肉ってもいる。それら全ての光景がクスクス笑えるようなタッチで「何気なく」進んで行く。
言い換えれば、あまりに後味が良いものだから「諷刺」である印象すら残らない。
でも、きっと観た人の心のどこかに、何らかしらの問題意識の「種」は植わっている。
そんな優しさと頑固さを併せ持ち、細やかなユーモアとウィットに富んだ漫画家さんのことです。表題の言葉が額面通りの訳がないのでは?
と思えば、「実はそんな深い意味もないのだよ」もありかも知れませんし、
何年も経ってから「そうか!」と気づくような、もの凄く深い意味もあるのかも知れません。
似たテーマは、当連載のVol.7で英SF作家ウェルズ氏の言葉、Vol.37のミュージシャン:ブライアン・イーノの言葉にもあります。
それらとこのジム・デイビス氏の言葉を重ね合わせると、
猫好きの彼ら、実は結構偏屈な著名人が言わんとしていることが、なんとなく見えて来るかも知れません。
最後までお読みくださってありがとうございます。
民族音楽演奏家/福岡猫の会代表: 若林忠宏
連載コラム「猫の名言」
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