人間は猫に生まれ変われるか? – 連載コラム「猫の名言」




猫の名言
photo: Kristine Paulus

連載コラム「猫の名言」

日本初のプロ民族音楽演奏家でもあり、現在「福岡猫の会」で病気の保護猫たちの看病を続けられている若林忠宏氏による連載コラム。猫や人間に関する世界の名言を紹介しながら、猫たちとの生活のなかで筆者が体験したことや気づかされたことをつづります。(「猫の名言」TOPページはこちら
 



Vol. 36 「人間は猫に生まれ変われるか?」

 
この世でどう猫に接したかで、天国でのステイタスが決まる。

Robert A. Heinlein (ロバート・A・ハインライン 米国のSF作家 / 1907~1988)
 

 皆さまのご愛読の御陰で、この連載も随分回を重ねることが出来ました。そして、少しずつ「猫に関する名言」のネット上でのステイタスも上がって来ているようです。ありがとうございます。

 ところが、猫好きで知られる著名なSF作家のハインライン氏がおっしゃる言葉は、今回まで35回ご紹介して来ました「猫に関する名言」「愛猫家ならではの猫的発想の名言」の中で、極めて異色で異例な名言であると言えましょう。
 何故ならば、当の猫は、およそ「ステイタス」というものに縁が無い生き方であり、感覚の持ち主であるからです。

 ステイタスの意味を辞書通りの「身分、社会的地位、共同体や組織に置ける立ち位置、存在感、象徴的な立場」とするならば。「猫にはその感覚が無い」と言う以前に、犬の方が遥かにその感覚に長けており、敏感です。

 よく世のおじさん連中がぼやく哀しい言葉に、「家に帰っても、嫁さんと子どもの世界で、俺の居場所が無い」があります。
 それでも何十年家族の為に汗して働き、堪え難きを絶え頑張って来て、ようやく無事に子どもたちを送り出し夫婦ふたりっきりも淋しいと、ペット=犬を飼うことにした。そしたらなんと。
 「ところが、その犬は、どうもカミさんが家で一番偉く、その次が自分で、この俺はその下であると思っているらしい」などという言葉もけっこう良く聞きます。斯様に、犬は「ステイタス」というものを重視しているのです。
 

 犬や猫に、人間社会のしがらみや、職場での気遣い、生業ということの大変さを理解して貰おうと考えても無駄なのかも知れません。
 TVドラマなどで、「お父さんが働く姿を見て、子どもが改めて感謝し、尊敬に繋がった」などという場面がありますが、愛犬や愛猫を職場に連れて行って働く姿を見せても、果たして何を理解してくれるでしょうか? 

 そもそも、日々、愛猫の為にご飯を用意し、トイレを掃除し、具合が悪ければ薬を飲ませ「嫌!」と言われればご飯にまぶし……….とこんなに尽くしているというのに。

 その点では「わん子は偉い!」
 お父さんの職場での働きは知らないけれど、お母さんの大変さはちゃんと理解して、感謝と尊敬を抱く。
 例えば、「僕ら犬は、缶詰には歯が立たないが、お母さんは見事に缶を開けてくれる。凄い!」と思ってくれる。だから「お母さんが一番!で、僕が二番!あのおじさんは僕の下」となる。

 序列意識の為とは言え、人間の努力や尽力を理解してくれる。
 もしかしたら、ワン子は職場に連れて行けば考えを改めるかも知れない……..。

 ところが猫は、「そんなに急かすなら自分で缶詰を開けてみろよ!」と差し出したところで、その有り難みが分からず、「何これ!これじゃ食べられないじゃん!」と怒り出す。

 もしかしたら猫は、数千年前、山猫から家猫になった時に「しかたがないから人間と一緒に居てやろう」「本当は自分の食いぶち位自分で狩りが出来るんだが」「それをしない代わりに、君ら人間がしっかり喰わせろよ!」と約束をして、全ての猫がその約束のことを知っているのかも知れません。

 しかしいずれにしても、感謝を感じるかどうか?とか、尊敬するかどうか? に拘らず、それが「序列」に関係して来るというのは、やはり犬には本来「群棲=社会性」の感覚があり、猫には無い。ということに尽きる訳です。

 
 そんな猫の話しなのに、表題の名言でテーマが「ステイタス」というのも、矛盾ではないにしても切ない話しです。そもそも人間は、「天国では皆平等=魂は皆平等」と言われて「それを聞いてホッとした」と思っていたのに違うのか? 

 確かに、「肉体の死と共に魂も滅びる」とは考えない、ヒンドゥー教や仏教などの教えでは、「今生の努力、精進」によって「徳」を積めば、次の生まれ変わりのステージも上がると言われています。

 なので、表題のハインラインさんの言葉に於ける「ステイタス」というのは、この世の社会性に於ける「身分や地位」のようなものではなく、「徳」のことなのでしょう。
 もしかしたら、基本的に輪廻を信じないとされる欧米圏には、「徳」を直訳する言葉が無いのかも知れません。

 
 つまり、この世でどんなに高い身分であろうとも、天国では皆身分は同じ。しかし、次に生まれ変わる時になって、その「徳」が問われ。「はい!元大会社の社長さん!」「貴方は前世で人をこき使って利己ばかりでしたから『徳』が足りません!」「なので、来世は蟻んこです!」「しっかり下働きしなさい!」となるのかも知れません。

 一方、一説によると「徳」の評価によって、前世と来世で負わされる苦労の度合いは異なるようですが、「猫は猫にしか生まれ変わらない」とも言われます。それは、そもそも猫がとても「徳」が高い生き物であるからだ、と言います。
 そして、哀しいことに、「人間は、幾ら徳を積んでも猫に生まれ変わることは出来ない」とも言われます。

 もし、これらが皆本当のことだったら………….。
 ハインラインさんのおっしゃることはかなり「なるほど!」という話しにも思えます。勿論、お得意の「SF感覚」かも知れませんが。

 
 最後までお読みくださってありがとうございます。

 
 民族音楽演奏家/福岡猫の会代表: 若林忠宏


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著者紹介(若林忠宏氏)

「福岡猫の会」




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