猫に学ぶ「本当の自由」 – 連載コラム「猫の名言」




猫の名言
photo: Sandy Schultz

連載コラム「猫の名言」

日本初のプロ民族音楽演奏家でもあり、現在「福岡猫の会」で病気の保護猫たちの看病を続けられている若林忠宏氏による連載コラム。猫や人間に関する世界の名言を紹介しながら、猫たちとの生活のなかで筆者が体験したことや気づかされたことをつづります。(「猫の名言」TOPページはこちら
 



Vol. 26 猫に学ぶ「本当の自由」

 
猫は、自分のしたいことをしたい時にする。貴方には為す術は一切ない。

Frank Perkins (フランク・パーキンス 米国の作曲家 / 1908~1988)
 

 フランク・パーキンス氏は、1960年代に多くのヒット映画音楽を手がけた人として知られています。

 彼が言う「猫は、したいことをしたい時にする」は、多くの愛猫家さん、猫と暮らしている方々がある意味「それが猫!」と当然のようにご存知のことですが、逆に「貴方にはなす術は一切無い」というのは、あまり聞きませんし、考えたことが無いという人も多いのではないでしょうか?

 この場合の「なす術」とは、「猫がしたいことを → させない方法」であり、または「猫にこちら(人間)がして欲しいことを → させる方法」である訳ですが、パーキンス氏は「どちらも不可能」とお考えのようです。

 確かに、愛猫が具合が悪く食べてくれないような時は、あれこれメーニューを変えても全然駄目だったりは、しょっちゅうのことです。
 また、一旦喧嘩のスイッチが入ってしまうと、止めるのは不可能に近い。下手に手を出すと、私たちも大怪我を負います。私も一針縫う怪我で数日痛みで寝られなかったこともあります。
 
 しかし、この十年で、かつてパーキンスさんと同じように考えていた理解と認識は大分改めることとなりました。

 「喧嘩を止める」時は、各部屋に準備した「霧吹き」を水鉄砲のように出して一瞬躊躇させたところに、尻尾でも足でも踏んでみると、意識が切り替わって「やめなさい!」の声が届きます。
  
 また、「食欲不振」の場合は、まずその原因からフォローし、胃腸炎や、胃腸の働きが過剰だったり過少だったり、電解質バランスの狂いや、若干の脱水状態などの方をフォローしてからの「手を変え品を変え」は、かなり有効になります。

 などなど、「猫にして欲しいことをして欲しい時にさせる」ということは、まんざら「不可能」でもないのです。
 
 しかし、それも実は「して欲しいことを猫がしたいことにすり替える」というある意味高等技術であるとも言えます。
 その意味では、「人間がして欲しいこと、させたいことを喜んでする犬」とは、根本的に異なることには変わりはありません。
 
 さらに言えば、私たち愛猫家は、第一段階:入門~初級編では、あれこれ、ひいひい言いながら手を変え品を変え努力するけれど、「親の心子知らず」で全く徒労に終わる。
 しかし、第二段階:中級編では、猫の心情や本質が大分分かって来て、無駄な努力は少なくなるし、逆に「猫のワガママ」を利用して巧妙な策をこうじることも出来るようになる。そして、最終的な上級編の第三段階では、気づけば、こちら(人間)が、いつの間にか猫が気に入るようなことをしていたり、猫に躾られていることに気づくという何やら矛盾、本末転倒なことが真実なのかも知れません。

 例えば、引き出しや、果ては冷蔵庫迄開けてしまって、中の物をぐちゃぐちゃに散らかしたり、つまみ食いをされたりした時。「簡単には開けられないように工夫」がその度に進化するのですが、気づけば、「整理整頓」や「小分けにしてしっかり蓋をする」など、私たちにとっても理想的な方向に躾られているという訳です。

 それまでは「こんなもんでよいだろう」とか「後できちんとするけれど、今は忙しいからとりあえず」のようなことがとても多かったのです。しかし、猫たちは、その甘えや隙を見逃しません。見事にしてやられるのです。
 で、結局は、その後片付けで、余計に時間が無くなり忙しさが増すのです。
 
 なので、その都度その都度、きちんとすることを躾けられる。結局は、その方が、あらゆる点に於いて最善の策であり、最も時間を節約出来ると思い知る訳です。

 そして、「はたっ!」と気づき、思い出されたのが、小学校時代の頃のことです。学校から帰って、玄関にランドセルを脱ぎ捨てるように落とし、「やりたいこと」にまっしぐらでした。
 お目当てのTV番組が始まりそうなので、脱衣所に服を脱ぎ捨て雀の行水でお風呂を済ませた。自分の食器洗いは「後でちゃんとやるから」と食後も直ぐに「やりたいこと」にまっしぐら。

 しかし、「やらねばならない=逃げられないこと」は、結局後に回すと余計にしんどいことになる。

 それらをうるさく言う親から解放されて久しい頃に、今度は猫が親代わり。ところが、それが結局は正解と、良い歳になって改めて気づくのです。
 「好き勝手の自由」は、決して「伸び伸び楽々」ではないことに。

 と、人間にそんな教育的指導をする猫はどうなのか? 

 実は猫もそういうことを痛感し改めるのです。
 一頭だけだった時は、食べ残して、また好きな時に残りを食べていた子が。数頭になると「今食べておかねば盗られる!」と必死で食べる。結局は、その方が胃腸が働く時と休む時の良いスケジュールを与えて、むしろ調子が良い。

 口に無理矢理ねじ込まされる薬も、「逃げ切れない」と知ると、嫌々ながら辛抱することを覚える。カプセルに入れた薬は、噛まずに上手に飲んでしまわないと、かえってとんでもない苦行を味わうことになると理解する。などなど。

 勿論、猫によっては、何時迄もそれが分からないお馬鹿な子もいますが。結局「嫌な思い」が増えるばかり。逆に、学び気づき納得した子は、表情が賢くなり免疫力も増して、以前より元気になる。言わば「良いことずくめ」。

 おそらく、猫本来の純粋な叡智の判断による「やりたいことをやりたい時に」は、自然の摂理に見事に従った、「道理」であり「真理」だったのでしょう。
 その場合は、人間がそれを学び、猫に従うのが賢明。

 それとは異なり、人間の真似をしてか? ただただ勝手気ままな「錯覚の自由」にまみれていた猫は、自らで悟って改める。だから、矯正でも強制でもない。あくまでも自由意志で。

 そう考え行動したり、改めたり、向上・成長することは、誰も束縛・妨害しない「無限で本当の自由」であることを猫に学んだ気がします。

 
 最後までお読みくださってありがとうございます。

 
 民族音楽演奏家/福岡猫の会代表: 若林忠宏


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著者紹介(若林忠宏氏)

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