猫が寝てばかりいる訳は? – 連載コラム「猫の名言」




猫の名言
photo: Ella Mullins

連載コラム「猫の名言」

日本初のプロ民族音楽演奏家でもあり、現在「福岡猫の会」で病気の保護猫たちの看病を続けられている若林忠宏氏による連載コラム。猫や人間に関する世界の名言を紹介しながら、猫たちとの生活のなかで筆者が体験したことや気づかされたことをつづります。(「猫の名言」TOPページはこちら
 



Vol. 20 「猫が寝てばかりいる訳は?」

 
猫は長者の生まれ変わり

日本の諺
 

 同じ意味合いで、もうひとつ日本の古い諺に、「猫は傾城(けいせい)の生まれ変わり」というのがあるようです。「傾城」は、花魁の最上格(?)、「長者」も「傾城」も、いずれもふんぞり返っていれば良い立場で、猫はまったく「そんな感じだ」と揶揄した諺でしょう。

 実際、どのような常套句になっていたのでしょうか? 
 おそらく戦後には、もう誰もいわなくなっていたのでしょうけれど。それ以前は、「まったくうちの猫ったら、寝てばかりで! 仕事しなくて良いわねえ」に対して「しょうがねぇさ。猫は傾城の生まれ変わりだって言うじゃねぇか」のように言っていたのでしょうか? 
 
 当連載のVol.12で引き合いに出しました、猫が語る有名な一作「吾輩は猫である」でも、この二種の諺は登場しません。
 ただ一カ所、Vol.12でも述べた、主人:夏目漱石をぼろくそに言う別の下りで、
嫁さんが呼んでも返事をしない。そんな漱石に「吾輩」がつぶやく台詞に

「返事をしないのはこの男の癖である。(~) 人間も返事がうるさくなる(面倒くさい)くらい無精になると、どことなく趣があるが、こんな人に限って女に好かれた試しがない。(~) 親兄弟に見離され、あかの他人の傾城に、可愛がらりょうはずがない、とある以上は、細君にさえモテない主人が、世間一般の淑女に気に入るはずがない。」

 があります。

 そんな無粋な漱石が吉原詣でをするはずもないのですから、唐突に「傾城」が出て来たのは、ここはやはり周知の諺に掛けて、「猫だって好いてやらんぞ」の意味の洒落なのではないでしょうか? 

 同じことは、西洋人も考えるようで、

「猫は貴族のようなもので、何もせずとも我々の賞賛に値する。一方犬は、卑屈だ。媚びへつらうことで自分の立場を獲得する。」
Alexandre Dumas (デュマ 仏小説家 / 1802~1870)

が知られています。

 むしろ西洋人は、日本人より遥か以前に「諦め」が徹底していたようで、「最早、何もしなくて良い!」「そのままが素晴らしい」と語った著名人は、

「優美な花瓶のごとく、猫は、たたずんでいても流れるようだ。」
George F. Wil (ジョージ・ウィル 米コラムニスト / 1941~)

「猫の役割は、そこにたたずむだけで賞賛されることだ。」
Georgina Strickland Gates (米写真家)

「静謐の理想型は、たたずむ猫の中にこそ存在する。」
Jules Renard (ジュール・ルナール 仏小説家 / 1864~1910)

などなど、続々出て来ます。

 確かに、猫は、一日の半分以上を寝て過ごしています。でもそれは、多くの生き物にとって当然自然のことであり、むしろ人間が動き過ぎ、働き過ぎなのかも知れません。

 「偉い!」というか「不憫」というか、同じく群れて暮らす、草食動物や犬の先祖や猿たちと異なり、「物を作る」ということを始め、後に「畑を耕す」ことも始めましたから、「寝る間も惜しんで」ということになってしまったのでしょう。

 さらに、社会がどんどん大きくなって、社会への義務としての労働や人間関係の付き合い事に費やす時間が増えれば、その他に自分の時間を持とうとすれば、さらに「寝る時間」が無くなってしまう。

 ある見方で言えば「人間は、創り出す喜びに人生の大半を費やす、希な生き物である」と言える反面「人間は、その創り出すという性の為に人生の大半を犠牲にする、哀しい生き物である」とも言えるのかも知れません。

 もっとも、人間と猫の睡眠時間を単純に比較出来ないという見方もあります。
それは、人間は、完全に安心し切って熟睡することが出来ます。ところが、猫は、親や兄弟も一緒に暮らすよほど安心できる環境でないかぎり、熟睡はそうそう出来ないようです。寝ていても、耳のアンテナは、敏感に働いている時が少なくありません。

 猫はまた、目をつむりながら考え事をしている時も多く。何も考えずに「うとうとする時間」をもこよなく愛する生き物ですから。それらも「寝ている」とされてしまえば、「寝てばかり」と言われてしまうのでしょう。

 
 最後までお読みくださってありがとうございます。

 
 民族音楽演奏家/福岡猫の会代表: 若林忠宏


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著者紹介(若林忠宏氏)

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